北本山の会 山行報告書

報告 2004 5月 8日  報告者(上野 司)

山行期間

2004年4月29日〜5月2日 前夜発   (4日)

山域・山名

ツールド白馬・雪稜登攀と山スキー周遊

リーダー

上野 司

参加者

上野・他会2名

コースタイム

4・28

23:00 森林公園

4・29

05:15 嵐山 8:45〜9:25白馬二股 11:10〜11:30猿倉荘 
13:00 主稜取り付き1520m 16:00八峰テン場 04・30 4:30起床 6:20出発 10:30頂上雪壁基部 11:00上野頂上 11:30 坂上 牧野 頂上 白馬山荘泊

5・1

06:50山荘発 9:40鉢ヶ岳手前鞍部 11:45雪倉岳頂上直下 
12:50雪倉岳頂上 15:00瀬戸川 16:30蓮華温泉着

5・2

7:05蓮華温泉 7:501700m 9:251980m 10:402250m 11:402380m 12:00白馬大池 13:052590mピーク 金山沢滑降開始点13:50 猿倉荘15:05

山行記録

4月29日

 朝5:15に嵐山を出発した我々は、渋滞に遭うこともなく8:45には猿倉手前7キロの二俣に到着した。猿倉までの道路が開通するのは30日午前10時だということで゛、二俣の少し先には頑丈な車止めが作られている。2時間弱、猿倉までの舗装道路を歩くことになるが、道端のミヤマイチゲ、ザゼンソウ、フキノトウなどとあいさつをかわしながらのんびり歩く。

 猿倉からは山荘裏の雪の急斜面を登り、白馬尻に続く林道に出る。猿倉台地に続く踏み跡を見送り、林道を歩くこと1時間ほどで主稜・8峰に続く雪の大斜面が迫ってくる。主稜取り付きから急斜面を登ること3時間、8峰の少し先の稜線上を今夜の宿に決め、ツエルトを張る。ツエルトを張るときには全くと言っていいほど風がなく、片側のみ簡単なブロックを積んだが、その晩はツエルトが破れんばかりの風が一晩中吹き荒れ、夜中にブロックを補強するために強風の中に出て行かなければならないハメになる。それでも、張り綱が切れないか、ブロック壁が倒されないか、外に置いたスキーが飛ばされないか心配で、あまりよく眠れなかった。

4月30日

 昨日はアイゼンを使用せずここまで来たが、今日は初めからアイゼン・ピッケル・ハーネスという出で立ちで白馬頂上を目指す。8峰から先は雪のナイフリッジを忠実に辿ることになるが、今回は雪がやや少なく、雪が切れているため雪壁になっている箇所があり、そこの乗っ越しがいやらしい。結局、昨日1回、今日1回ロープを出して後続を確保したが、そこ以外にも滑ったらお陀仏というところは何箇所もあり、全体を通して気が抜けない。10:30頂上雪壁の基部に到着、傾斜は60、70度、長さは60メートルくらいあるが、両側が落ちていない分怖さは感じない。しかし、念のためスノーバー2本を使用して安全確保をはかり、11:00頂上雪壁を突破した。後続2人がプルージックで続き、11:30全員が雪壁上に出る。今回は、頂上直下の雪庇を避けるようにやや右のラインに踏み跡がついており、それほど苦労することなく上に出られたことは幸運ではあったが、少し物足りなくもあった。頂上で3人記念撮影をし、眼下に見える白馬山荘に入る。今回は、山スキーを使用しての縦走なので、軽量化を考え1泊目以外は山小屋泊まりを採用したが、この時期の山小屋は混雑もなく、「お食事の用意ができました」と声をかけられるまでゆっくりと酒を飲んでいられるのはやはりいいものだ。

5月1日

 6時に朝食をとり、7時前には山荘を後にする。今日は、白馬岳から雪倉岳に続く稜線の西側、柳又谷の源頭部を滑ることから始まる。我々にとってはこの山行で初めての滑りとなるが、早朝の3,000mの雪面はガリガリのアイスバーンになっており、お世辞にも快適とは言えない。しかし、すり鉢状の地形とそれほど傾斜はないことから、スキー初心者の坂上も何とか滑り降りる。標高2,350m・柳又谷が西へ向きを変えるあたりで滑降を終了し、シールをつけ鉢ケ岳手前の鞍部までゆっくり登っていく。

 さて、ここからは鉢ケ岳を右からトラバース気味に巻き、雪倉岳の避難小屋に出るルートがよく採られているようなので我々もそれに従うが、これが結果として雪倉岳東面までの大トラバースとなってしまった。左にコルが見えればそこに登っていくつもりであったが、最初に斜滑降で一滑りしたことで少し高度を落としてしまい、結局そのコルが確認できず、「随分長いトラバースだな」と思っているうちに蓮華温泉から雪倉岳目指して登ってくるパーティーに会うことになり、現在地が確認できたというわけだ。少し苦労はしたが、途中雷鳥にも会えたし良しとしよう。ここに荷物をデポし、空身になって雪倉の大斜面を登り、頂上に着く。空は真っ青、はるか遠くに蓮華温泉の赤屋根も見え、これからの大滑降に心が騒ぐ。大きく息を吸い、先ほどのデポ地までノンストップで飛ばす。雪質も上々、気持ちのいい中まわりのパラレルターンでかっ飛ばせば、腹の底から生きている喜びが湧き上がってくる。ここで荷物を背負い、雪倉東面・滝ノ沢沿いに滑っていく。途中、雪倉の滝を右から巻き、なおも滑り続けると瀬戸川の本流に出る。これをスノーブリッジで渡り、滝見尾根に登り、蓮華温泉へとトラバースしていく。このトラバースにかなり時間をとられ、山頂から見たあの赤屋根と再び出会えたのは4時半になっていた。今回はゴールデンウィーク中でもあり予約も取ってなかったので、少し心配であったが、3人に素敵な8畳の個室が用意され、温泉と相まって楽しい一夜となった。

5月2日

 蓮華温泉からの最終日は、平岩方面に下るか、天狗原に登り返すのが普通であるが、今回はチャレンジついでに白馬の金山沢を白馬尻に滑るコースを取ることにした。朝7時、山荘の裏手からのびる白馬大池に続く尾根を辿る。蓮華温泉が1,470mで白馬大池から小蓮華山方面に少し登った金山沢への滑降地点が2,650mくらいあるので、今日も約1,200mの登りである。「白馬には雨は降らないのか」と思えるほど連日晴天が続くが、今日は雲一つない快晴であることに加えて、風もなく汗が吹き出る。一ピッチで標高差250mくらい登ることを心がけ、金山沢の大滑降を楽しみにしながら、着実に高度を上げていく。13:05金山沢に滑り降りることのできる地点に到着し、坂上は出だしが急斜面のためスキーを背負って下山を開始したが、スキー組は滑降に快適そうな斜面を探してもう20分ほど登る。いよいよ滑降開始。気温の上昇で雪がややくさっており、雪倉と比べると滑りにくい面はあるが、この金山沢の大斜面も山スキーを志す者なら一度は滑ってみたい斜面であることは間違いなかろう。30分ほどで大雪渓本流まで滑り降り、対岸の林道に登れば、後は猿倉までほんの一滑りであった。

備考

ツールド白馬を完走して 

                     上野 司

 私は、ここ数年毎年春には、スキーの機動力を生かしての長距離縦走を基本にした山行を計画している。地図とにらめっこをし、理想的なコースを考え出すことが楽しいのだが、計画立案にあたっては、次のような点を考慮に入れている。

@     スキーの機動力を使わなければ日程的に不可能であるようなコースどり。そうでなくとも、スキーを使うことによって、スキーを使わない場合よりかなり速く完遂できるようなコースどり。

A     ある山域をめぐる、魅力的なルートを登り降りしながら走破するようなコースであること。

B 山スキーによる快適な標高差の大きい滑降が期待できるようなコース。

C 荷物を軽量化するために、できれば山小屋利用ができるコース。

D 雪稜登攀の楽しさも併せ持てればなお良い。

そんな考えから、これまで「ジャパンオートルート」「ツールド剣」「仙の倉北尾根からシッケイ沢」「ツールド槍」「ツールド谷川」などを計画し実行してきたが(それぞれの山行は成否は様々だが)、今年は白馬岳に的をしぼり、白馬岳をめぐる魅惑のコースを組み合わせてコースを考え「ツールド白馬」と名づけてみた。白馬岳から柳又源頭部を滑り、雪倉に達する部分と金山沢の滑降が私としては初体験で是非やってみたかったが、白馬岳に達することなしには柳又も滑れないわけだし、白馬に登るのであればやはり白馬の主稜が楽しいだろう、というような形で、今回のコース取りは決まっていった。今回、4日間晴天が続くという幸運を味方にして、予定した行程のすべてを成功裡に終わらせることができたが、天候のことを除けば、パーティー3人の体力がそろっていたことが成功の最大の要因だったろう。荷物を背負っての標高差合計3,800mの登り、3,200mの下りはただでさえ体に応えるが、下りの疲れはスキー技術によって大きく違ってくる。その点では、スキー初心者の坂上が、時にはスキーを脱ぎながら頑張れたのも体力があってのことだったろう。

白馬主稜をさらりと登るアルパインクライマーはいる。また、雪倉東面や金山沢を苦もなく滑り降りるようなスキーバムもいるだろう。しかし、それらを繋げてやってみようと考える人はそう多くあるまい。岩登りでも継続登攀というのがあるが、いくつかのルートを継続しながら登りきった充実感は格別のものがある。今回、雪稜登攀を楽しみ、スキーの大滑降も楽しむという欲張りな計画が実現したのも、主稜の登攀には必要のないスキーをかつぎ、後半の山スキーでは、必要のない登攀具を持ちながら滑降するという負担に耐えたご褒美だったのだろう。さて、来年はどこへ行こう。さあ、これからも体力を維持し、欲張りな計画をさらりとこなせるような自分でありたいと思う。